まだ成仏してない父への手紙 vol.1

まだ成仏してない父への手紙 vol.1

まだ成仏してない父への手紙 vol.1

 

いい年をして、
96歳の父にパパなんてみっともない。

それは分かってます。

けどね、『三丁目の夕日』世代って、
何かと外来語をありがたがっていたので、
まぁ、お許しを。

 

 

パパへ

 

今はまだ、成仏してなくて、
その辺に漂ってるんでしょ?

だったら、自分のお葬式みて、
びっくりしたんじゃない?

パパは心臓止まったのも、
息が止まったのも知らないで
笑った顔のまま、口開けて寝てたもんね!

まあ、そこから先のママのしたこと、
どう思って見てたのか?

ちょっと聞いてみたいわ。

パパに巻きつくように乗っかっちゃって、

「パパ、名前を呼んで!
名前呼んでくれるまで帰らないから!」

って、絶叫してたし、

私が困り果ててるのも見てたよね?

お葬式だって、「天井が落ちてくる!」と、
発狂したように叫び、

「あなた、すぐに呼びにくるって
約束したじゃない!すぐに来て!
もう、死にたーい!」

ママの声で、お経も聞こえなかったわ!

まぁ、迎えに来てくれなくてもいいけど、
少しは大人しくするように言って欲しいわ。

だって、法事にはパパの会社の関係者の
〇〇さんたち、12人で
お焼香に来てくださる予定なの。

みなさん、オヤジの前で
同期のサクラ歌うって!
誰も戦争に行ってないのにね!

法事でお経を聞いたら、成仏して
先発組の他界された〇〇さんや、
〇〇さんたち、
懐かしい人にも会えるんだね!

きっとお空は平和だよ!
ママがいないから。

きっとパパもそう思ってるよね?

入院中からさぁ、
大奥シェルターにいるようで、
極楽だって言ってたもんね!

パパと私は共同戦線張って、
ママをなんとか宥めてきたけど、
今はそうできない。

そのことが、とっても寂しいよ。

いつだって目で合図して、
まぁ言わせておくか?とか、
まぁ、そろそろ帰りなさい。って言う、
ささやかな抵抗だったけどね!

それでも、寂しい!

もう、私の味方してくれる
パパがいないなんて、信じられないし、
辛いよ!

じゃ、法事までは、
その辺にいて私を支えてね!

音が出ます!ミュートでね!